2008年05月09日

自分が「善」になったつもりが一番危ない!!





≪午前1時半の電話≫
 幼時から世話になった児童文学者の石井桃子さんが、4月2日亡くなった。
 逝去から程なく4月3日午前1時半、我が家に電話がかかった。家内が起きて受話器を取る。某新聞文化部の記者であった。「石井さんが亡くなられたかどうか確認したい。知らなければ知っている人を教えてほしい」。家内が「お教えしたらその方へ、今電話をかけるのですか」と訊いたら、ごく自然に「はい」と答えたそうだ。
 すっかり目の覚めた私が電話に出て、「総理大臣に何か異変があって秘書官にかけるならともかく、101歳の児童文学者が亡くなったかどうか午前1時半に電話で確認せねばならない理由は何ですか」と尋ねた。記者はうまく答えられなかった。

 ≪特ダネばかりに目が≫
 一体マスコミの常識とは何か。ニュースを正確に速く伝える。そのためにできるだけのことをする。記者として立派な常識である。しかしそれ自体が目的ではあるまい。
 速く伝えなくても、価値の減じない情報もある。相手かまわず夜中にたたき起こし取材して、一刻も早く伝えねばならない情報がどれだけあるのか。速報性を言うなら、新聞はネットやテレビに負ける。それでも人が新聞を買って読むのは、より正確で深い分析を求めるからだろう。
 本来マスコミの役割は、世の中の常識に照らして疑問を覚えるような事象につき、正確な情報を伝え読者や視聴者の判断に資することにある。社会保険庁、国交省、チベットやイラクで、本当は何が起きているのか、背景は何か。当事者が書かれたくない不都合な事実を報じるからこそマスコミは恐れられ尊敬される。本欄にも「正論」などという、私が思うに気恥ずかしい題がつく。
ところがマスコミは、特ダネ、視聴率、締切といったことばかりにエネルギーを注ぎがちだ。その結果文化部の記者まで、夜中に突然電話してくる。こんなマスコミの常識を世間では非常識という。
 マスコミの常識には他にも怪しいのがたくさんある。不祥事の疑いがあるだけで、会社や役所の責任者に記者会見で居丈高な物言いをする。テレビのワイドショーやニュースで、無責任かつ根拠のないコメントをする。誤報を流しても簡単な訂正で済ませる。

【正論】慶応大学教授・阿川尚之 「マスコミの常識」は非常識
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/080508/trd0805080326000-n1.htm


マスコミの報道によって、プライバシーも何もない状況にあると、みなさんも感じているのではないだろうか。
「国民は知りたがっている」
マスコミはこの言葉を使うが、それは視聴率だけで判断できる問題なのであろうか。

「勧善懲悪」

「水戸黄門」がずっと高視聴率をキープできている理由はそこにある。
わかりやすい「善」と、わかりやすい「悪」。
誰がどう見ても悪いのは「越後屋」であり、それを懲らしめるのが黄門様ご一行だ。

逆に、「悪にも美学がある」、という形になってしまうと、
「倒したときに爽快感が無い」ということで、すっきりしないから批判を浴びる。
「なんで倒してしまったんだ!?」と。

だから、マスコミが何かを報道する際には、一方の意見を多めに掲載し、
または、あきらかに「過剰」と思える事例ばかりを掲載する。
誰がどう見ても「悪」と言えるものを作り出し、それを叩くことで爽快な気分になるためだ。

だから、極端な事例を「一般事例」と勘違いする国民が多く出てくる。
本当は、そうした極端な事例ばかりではないのが世の中なのに・・・

事実をねじまげてはいない。確かにそうかもしれない。
しかし、一部の事実のみを報道し、さもそればかりに思わせているのは、
情報操作と言われても仕方が無いのではないだろうか。


悪いことばかりを放送して、それを叩いていい気になるような社会は、私はまちがっていると思う。
いいことばかりを放送して、「これだけがんばっている人たちがいますよ」という報道をもっと多くして、
「ああっ、自分もがんばらなきゃいけないな」と思わせることのほうが、よっぽど世の中に役立つのではないだろうか。

人を叩くのは簡単だが、それによって相対的に自分が高い位置についた気になるのは非常に危険。
それこそ、人を堕落させる最も簡単な方法だから。

そうではなく、自分が努力してより高い位置に、いや高い低いではなく、立派な人になっていくこと。
それこそ人が生きていく上で必要なことなのではないだろうか。

自分は善だ、などと批判ばかりをしている人間にならないようにするためにも、
そうした人たちを作り出さないためにも、マスコミのやり方について、
もっともっと警鐘を鳴らし、みんなで社会を変えていく必要があると、そう感じています。



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